独身女性の老後② 孤独で不幸? 一人ぼっちの「人付き合い戦略」
前回の記事では「独身女性の老後」について、「幸せに暮らす条件」を提示しました。
統計を考察した結果分かったのは、
- 健康
- お金(経済的な余裕)
- 精神的な充実
という3条件。
そして3条件の前提となる「老後の住まい」の重要性でした。
※「配偶者の有無は老後の幸せに大きく影響しない」という意外な発見もありました
今回は「精神的な充実」に欠かせない、「老後の人間関係」、そして「人付き合い」について見ていきます。
三重県四日市市在住 3人の子供を持つ母
結婚、出産、子育てをしながら、某大手生命保険会社に12年勤務
退職後、生川FP事務所を開業し、2007年2月、株式会社アスト設立
マネーライフに関する様々な分野でのコンサルタントとして活動中。
現在、家計相談などのコンサルタントの傍ら、各地でこづかいゲームをつかったワークショップをはじめ、子どもの心とお金の関係について講演、セミナーを行っている。
2015年度金融知識普及功労者として金融庁・日本銀行から表彰を受ける。
【主な保有資格】
・CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
・認定生命保険士(TCL)
・住宅ローンアドバイザー
・住宅建築コーディネーター
・相続診断士
・終活カウンセラー
・2級ホームヘルパー
株式会社アスト様の公式HP
目次
女性の方が男性より人付き合いは上手? 独居老人は男性ばかり
独身女性の人付き合いには、一種のパターン(法則)があります。
それは、
「一人になりたいときは一人になる」
「誰かと一緒にいたいときは一緒にいる」
そんな付き合い方。
それが当たり前じゃん、と思ったあなたは賢く器用な人。
男性からすると「女性は上手いことやってるなあ…」と羨ましくも見えるようです。
「男性は孤独に耐性がある」
「男は一人になりたい生き物」
なんて言われますが、老後の男性はかなり悲惨。
退職して仕事上の人間関係を失うと、プライベートな人付き合いは、ほぼゼロ。
途端に「独居老人」になってしまうケースも珍しくありません。
「孤独死」の男女比とキャリアウーマンの落し穴
例えば「孤独死」の割合を見ると、男性83.3%、女性. 16.7%。
独身男性の典型的なパターンとして、
- 定年後は一気に人間関係が縮小
- 仕事という生きがい、ステータスを失って、社会性も喪失
- うつ病などの気分障害を発症してしまう
そんな事例が極端に多いのです。
一方で女性は、老後も上手に「つながり」を維持する傾向があります。
一人暮らしでも、家族と頻繁に連絡を取り合い、地域活動に参加し、趣味を共有できる仲間を見つけ、あるいは友人と共同生活を始め…(例えばシェアハウスの男女比は3:7です)
女性はたとえ無意識にしろ、孤独に対するリスクヘッジに余念がありません。
問題なのは、現在の社会にある種の過剰適応をして、「男性のような生き方」を選択してしまった場合。
一般に「キャリアウーマン」と呼ばれる女性たちです。
「仕事が生きがい」
「一人でいる方が楽しい」
「人間関係は仕事上の付き合いが中心」
そんな独身女性が老後を迎えると「一人ぼっちのリスク」に直面することになります。
孤独になる人、ならない人の違いは「経済的な豊かさ」
独身女性が「孤独になりにくい」背景には、実は社会的な問題が関係しています。
それは「女性が男性並みに働いても報われない」という差別の構造。
キャリアアップが難しいからこそ、私たち女性は「それ以外のこと」を大切に扱います。
仕事一辺倒にならず、趣味に打ち込んだり、家族や友人との時間を大切にしたり…
または結婚・出産・育児を選択をする(独身生活に見切りをつける)女性もいます。
※社会的に「恵まれている」せいか、生涯未婚率は男性の方が高いです
皮肉な様相ではありますが、社会的・経済的に恵まれていない女性ほど、人間関係を大切にする(大切にせざるを得ない)ため、孤独にはなりにくいのです。
生きがいの喪失が「一人ぼっち」を招く
裏を返せば、社会的・経済的に成功しているキャリアウーマンは、老後は「孤独になりやすい人」でもあります。
人生の軸足が職場にあるため、仕事上の人間関係こそ充実していますが、定年後はその大部分を失い、「貯蓄だけが頼りの高齢者」に。
そこには【退職=生きがいの喪失=人間関係の喪失】という危険な図式が見て取れます。
「仕事命」で生きてきた団塊の世代が高齢者となった昨今、「孤老」の問題は、ますます顕在化しています。
そして恐らくは、現在30代~40代のキャリアウーマンも、近い将来に似たような状況に置かれることでしょう。
「家族と暮らす老後が幸せ」という幻想
孤独にならない方法は家族を作ること…
と言ってしまえば身も蓋もありませんが、実は意外なデータが存在します。
高齢者の自殺率を見ると、むしろ家族と同居しているケースで、「一人暮らしの高齢者よりも自殺率が高い」という結果に。
家族に「気を遣う」からこそ、「迷惑をかけたくない」からこそ、同居の身にある高齢者は、肩身の狭い思いをしているのかもしれません。
「同居で迎える老後も意外と大変」だとすれば、逆に、「一人暮らしには一人暮らしなりの良さもある」ということでしょうか。
もちろん人によって「向き不向き」はあると思います。
家族に囲まれて幸せに暮らす老後もあれば、一人暮らしの生活で充足できる老後もある。
少なくとも、
「家族こそ最高の生活保障」
「孤独を回避する最良のセーフティーネット」
と言えないことは確かなようです。
最高の人間関係は「独身の老後」にこそある
家族は距離が近すぎて疲れる。
親戚づきあいは面倒なだけ。
介護士や看護師との関係は、あくまでビジネスライク。
そんな私たち現代人にとって、適度な距離を維持できる人間関係は、やはり「友人」。
先ほど「独身女性の人付き合いにはパターンがある」と説明しました。
「一人になりたいときは一人になる」
「誰かと一緒にいたいときは一緒にいる」
基本的には、老後もこの状態を維持できれば問題ないのです。
…というよりむしろ、この状態は「独身の高齢者だけが実現できる」贅沢な人間関係。
家族がおらず、仕事上の付き合いがなく、そして配偶者もいないからこそ、特権的に享受・追求できる「理想的な人付き合いの仕方」なのです。
不要な人間関係は思い切って断ち切る
「人間関係を取捨選択する」という意味はつまり、「不要な人間関係を断ち切る」ということと同義です。
その判断は、一見したところ容易ではありません。
例えば、
「一緒にいると疲れるけど、頼りになる人」
「友人として好きではないけど、面白い人」
そんな人々をどのように扱うべきでしょうか。
血縁が絡むと話はさらにややこしくなります。
どんなに仲が悪くても、兄弟や親類との関係を簡単に「切る」ことはできません。
しかしそれでも私たちは、
「人間関係は必要最小限に」
「家族とは距離感を大切に」
以上の2点を繰り返し述べたいと思います。
「一人になりたいときは一人になる」という暮らしを堅持するためには、付き合う人間を「厳選」しなくてはなりません。
とはいえ、必ずしも「0か100か」で考える必要はないでしょう。
- 家族とは少し離れた場所に住む(あるいは引っ越す)
- 一緒にいて楽しくない友人とは、たまにしか会わない(数ヵ月~数年に一度とか)
- 積極的に仲良くしたい友人とは、今まで以上に親しく付き合う
要はバランスの問題ですね。
孤独にならないための予防策
人付き合いを減らしていくと、気楽は気楽で良いのですが、孤独に陥るリスクも高くなります。
ですから、並行して「新しい友人をつくる」努力も必要。
老後に途切れがちな人間関係を、新たに開拓していくわけです。
具体的な方法としておすすめなのは、
- 同窓生と連絡と取り「旧交を温める」
- 趣味のスクールやボランティアに参加してみる
- インターネット(SNS)などを活用する
以上のようなシンプルなアプローチ。
高齢者がインターネット…
などと言うとあまりピンとこないかもしれませんが、これは私たちが老後を迎える20年~30年後の話です。
その頃には高齢者もインターネットを使いこなし、新しい形で「つながり」を構築していることでしょう。
これら「孤独にならないための予防策」は、「今から」始めておくのもおすすめ。
仕事上の関係に偏りがちな人付き合いを、老後に向けて軌道修正してみましょう。
備えあれば憂いなしです。
友人は「できる」ものではなく「つくる」もの
「老後に新しい友人をつくりましょう」という話を聞くと、抵抗を覚える方もいるようです。
考えてみれば、学生時代の友人や仕事上の人間関係は、自然発生的にできるものばかり。
会社や学校という閉じられた空間の中で、いわば「付き合いを余儀なくされる」関係です。
それらは「友情」や「コネ」として結実することもありますが、必ずしも積極的に選択した人間関係ではありません。
しかし私たちは「友人は自然にできるもの」という考え方に慣れ親しんでいます。
同僚にしろ同級生にしろ、そして「ご近所さん」にしろ、ごく限られた狭い範囲でいわば消去法的に付き合う相手を選び、「何となく一緒にいる」人が大半ではないでしょうか。
「友人は自然にできるもの」と考えていている限り、老後の人間関係もこのレベルに留まります。
では、「友人は選択的につくるもの」という風に考え方を切り替えるとどうなるでしょう。
例えば私たちは、恋人や結婚相手を「厳選」していないでしょうか。(だからこそ独身なのかもしれませんが…)
同じく友人や人間関係も「厳選」して良いのではないでしょうか。
話がとことん合う人、共通の趣味を持つ人、一緒にいると楽しい人…
「友人は自然にできるもの」という固定観念にとらわれていると、あなたは「偶然の出会い」に全てを託さなくてはなりません。
日常的な生活空間(学校・会社・ご近所)では、多くて数人程度しか、「魅力的な友人」は見つからないでしょう。
でも「友人は選択的につくるもの」だと考えを改めれば、可能性は一気に広がります。
地域活動、ボランティア、カルチャー教室、日帰りのツアー、インターネットなど、「きっかけ」は何でも構いません。
「就活」や「婚活」があるように、老後に備えて「友活」に励みましょう。
※ネット上の関係は良くも悪くも簡単に「切れる」ので、友人を厳選したい方におすすめです
友人を「つくる」ということは「選ばれる」ということ
「友人をつくる」ときに欠かせないのは、「友人に選ばれる」という意識。
片思いでは男女の交際が成立しないように、友人関係も「両想い」が前提となります。
友人をつくる努力は、「友人を見つける」だけではダメで、あなたがその人から「選ばれる」ことではじめて実を結ぶわけですね。
…このように書くと、「面白い人」になろうとしたり、「相手の喜びそうなことばかり言う人」になろうとして、むやみに張り切る人がいます。
しかし私個人の経験から言うと、「面白い人」の多くは、「自分のことを面白いと思っている人」に過ぎません。
「相手の喜びそうなことばかり言う人」は、サービス精神が強すぎるあまり、「人間関係に疲れやすい人」です。
どちらも「豊かな人間関係」からは遠い存在で、「喋り過ぎる人」だったり、「一緒にいて疲れる人」だったりします。
逆の立場で考えてみましょう。
あなたはどんな人と友達になりたいですか?
打ち解けて話しやすい人、一緒にいて疲れない人には、どのような特徴があるのでしょうか?
よく喋る人よりはむしろ「丁寧に話を聞いてくれる人」、面白い人よりは「自然体で接してくれる人」の方が、より魅力的ではないでしょうか。
だとすれば、難しいことは特にないはず。
自分が「求めているもの」を、相手にも与えれば良いのです。
なんだか聖書の教えみたいですが…(笑)
「話が合う」とか「一緒にいると楽しい」とか、言い方は色々とあるにしても、突き詰めると「友情」とは、そういう関係の上にこそ成立するものではないでしょうか。
独身女性の「友達不要論」は危うい?
独身女性の多くは、孤独に耐性があります。
だからこそ、
- 老後を迎えてもわたしは一人で生きていける
- 老後の人付き合いなんか億劫なだけ
そのように考える方もいるかもしれません。
「独身貴族」や「おひとりさま」などの言葉に象徴されるように、独身女性には「自分は普通の女性とは違う」というエリート意識めいたものがあります。(私にもそういう側面はあるかもしれません)
そんな考え方も年を経て軟化していく…
とは限りません。
むしろ、ますます意固地になり、一人でいることに固執してしまう傾向があるようです。
(私がそうです)
しかし、独身女性の先輩方に話を聞くと、「一人の老後は案外さみしい」模様。
「結婚しておけば良かった」という方は少ないのですが、「子どもは欲しかった」「友人は大切に」という言葉を後悔しつつ語る人がいます。(なぜかマイハピ編集部にたくさんいます)
某大手介護事業者が実施したアンケートによると、「孤独になりやすい人」には以下のような特徴があるようです。
- 女性の平均年収を3~4割ほど上回る「キャリアウーマン」
- 独身女性の中でも結婚経験が一度もない「生涯未婚の女性」
- 貯蓄や投資、保険など、貯蓄が趣味の人(老後資金をしっかり蓄えている人)
- テレビの視聴時間が1日平均6時間以上
- 趣味の少ない人(趣味の回答個数が4つ以下)
…ちょっと怖いアンケート結果ではないでしょうか。
お金とキャリアはあるけど、特に趣味もなく、家族も友人もいない、テレビばかり見る老後なんて…。
友人は老後のライフライン
「老後は一人でも生きていける」かもしれないし、人付き合いとは確かに面倒なもの。
一人でいることの愉悦は、私自身よく分かっているつもりです。
でもあえてここで、クリスマスやお正月を一人で過ごすときの孤独感を思い出してみましょう。
「老後は皆に忘れられて、あのいや~な感じがずっと続くのよ」
こう愚痴ったのは私の叔母。
彼女は自他ともに認めるキャリアウーマンでしたが、お世辞にも幸せとは言いがたい老後を送りました。
数年前に亡くなるまで、高級マンションでひとり鬱々と暮らし、たまに電話をすれば愚痴ばかり。
孤独からやがて心を病み、心療内科に通う日々が続きました。
彼女の晩年を見て痛感させられたのは、「人は老いると孤独に弱くなる」ということ。
そして「自分の弱さを自覚する」必要性です。
孤独の限界値を知ること。
「友達は他人だから役に立たない」
なんて強がらないこと。
発想を転換してみましょう。
友人は一種のライフライン。
他人だからこそ、自分の都合に合わせて気軽に「利用」できるのです。
友人=友情の観点から語ろうとすると、どうしても話が難しくなりがち。
ですから感情論は排して、「友人は役に立つ」と、あくまで打算的な視座から考えてみましょう。
すると一つの「戦略」が見えてきます。
友人とは「心地よい暮らしを維持するための資産」に過ぎないということ。
基本的な位置づけは「お金」や「健康」、そして前の記事で述べた「住まい」と変わらないのです。
「友達をつくる=暇つぶし用の物資を調達する」くらいに割り切って、新たな人間関係の構築に取り組んでみてはいかがでしょうか。
独身女性の「人付き合い戦略」
老後の独身生活は、確かに孤独かもしれません。でも、孤独と「寂しさ」は似ているようで別のものです。
たとえ一人暮らしでも、必要最小限の人間関係さえ維持できれば、寂しさに打ちのめされることはありません。
友人という人間関係の「在庫を調達する」ことで、「寂しさのない一人暮らし」だって実現できるはずです。
…このように書くと、いかにも理想論のように聞こえるかもしれません。
確かに「家族に囲まれた老後」には、それはそれで良さがあると思います。
そして「友人と過ごす老後」には、「家族を作る」以上の戦略が、ノウハウが必要かもしれません。
例えば、「友人に先立れるリスクに備える」こと。
「年下の友人を作る」などして、友人を失うリスクを分散しなくてはなりません。
年齢を重ねれば重ねるほど、(体力的にも精神的にも)年少の友人は頼りになります。
ぜひ一定数を確保しておきましょう。
寂しさが紛れるのなら、共に過ごす相手はペットでも全然良いと思います。
ペットはときに「もの言わぬ友」として、私たちの暮らしに優しく寄り添ってくれます。
どうしても人付き合いが面倒…
でも最低限の「つながり」は維持したい…
ワガママな私たち独身女性にとって、ペットこそ最後のセーフティーネットかもしれません。
最後に
本質的な「幸せ」とは、「他人から見て幸せそうかどうか」ではありません。
「孤独」や「寂しさ」についても同じことが言えます。
老後を迎えた独身女性が、(周囲からどう見えようと!)必ずしも「寂しい人」=「不幸な人」だとは限らないのです。
逆に、家族に囲まれて暮らす高齢者が皆幸せかと言えば、「お荷物」「腫れ物」として扱われ、意外と肩身の狭い思いをしていたりします。
お金の多寡よりもむしろその「使い方」で人の幸せを左右するように、人間関係も「量」ではなくその「あり方」で本質的な価値が決まるのではないでしょうか。
人間関係のあり方が多様化する昨今、きっと未来の高齢者(つまり私たち)は、これまでにない「新しい老後」を迎えていることでしょう。
友人との共同生活か、猫を溺愛する一人暮らしか、あるいは「友達の多いおばあちゃん」として、地域活動や趣味に没頭する日々か…
「幸せそうに見える老後」ではなく、あなた自身が本当に「幸せを実感できる老後」を目指して。
今から孤独を見つめ、「寂しさのリスクヘッジ」で老後に備えましょう。
次回は、老後の展望に欠かせない「お金の話」を考えていきます。
参考:シェアハウスとは? 選ぶポイントや高齢者向けシェアハウスを解説! | シェアハウス検索サイト『シェアシェア』
参考:高齢者がシェアハウスに住む問題点とは? 選ぶ時のポイントを解説! | シェアハウスチンタイ
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